
知らなかったが、その人気ぶりを耳にしたラーメン店。偶然近くを通りがかったので足を運んだ。店先には長蛇の列ができており、観光客らしき外国人の姿もちらほら。ラーメンはコッテリ系。自分としては博多のラーメンはあっさりしているはずなのであまり合わなかった。

黄色い列車を目撃した。窓越しに見えるのは、まるで高級レストランのような光景。スタッフが優雅に料理を提供している姿が目に入った。この路線はテーマ性のある列車が多いと聞いていたが、これは「スイーツ列車」と呼ばれるものらしい。その鮮やかな黄色の車体は、幸福を運ぶドクターイエローを思い出させた。

鳥栖の町は、表側のスタジアムが賑やかな一方で、裏側には古き良き街並みが残っていた。小さなお餅屋に立ち寄ると、年配の店主が迎えてくれた。かき餅や普通のお餅が店頭に掲げられていたが、かき餅はなんと1週間後にしか手に入らないとのこと。仕方なく普通のおまんじゅうを選んだが、木箱に丁寧に詰められたそのお菓子は、見た目からも美味しさが伝わってきた。店先には親子連れが通り掛かり、団子を買い求める姿も。賑わいの中に感じる素朴さが心地よかった。

焼肉と街の多文化
サッカー観戦のため多くの人が街を訪れており、一つの人気焼肉店はすでに満席だった。二軒目を訪れると15分の待ち時間で入店可能とのこと。待った甲斐があり、佐賀牛の極上焼肉が手ごろな価格で堪能できた。スタッフの多くは外国人で、客層も日本語、中国語、韓国語が飛び交う異文化の交差点のよう。右隣は韓国語を話す家族、後ろは中国語を話すカップル。そんな中で日本の上質な焼肉を味わうという不思議な体験だった。


街は暗がりが多く、倉庫街の無機質な雰囲気が漂う。それでもサッカーファンや労働者、旅行者が点在し、その混在感が独特の空気を作り出している。異国の労働者と思しき自転車乗りや、どこかへ向かう親子連れが散りばめられた街並み。明るさだけではない街の魅力を垣間見た。
夜のホテル、そして静寂の川沿い
ホテルの部屋からは、川沿いの静かな風景が広がる。電灯のない道を昨夜歩いた時には、不安すら覚える暗さだったが、こうして窓越しに見ると、その闇の中にある山々や住宅街が穏やかさを感じさせる。駅前の賑わいと夜の静寂が、同じ街の異なる表情を映し出しているようだった。

福岡空港での締めくくり
旅の最後に訪れたのは福岡空港のデッキ奥にあるサントリーのビールバー。客は私一人だけで、貸し切りのような空間だった。注がれたビールの泡の上に「MALT」の文字が浮かび上がる。ほんのひと手間だが、それが妙に印象に残る演出だった。これぞサントリーの流儀というべきだろう。


この旅は、多文化が交差する不思議な街と美味しい食事、そして心温まる出会いの連続だった。派手さはないが、どこかしっかりと地に足がついた感覚。それが鳥栖の魅力であり、自分を発見する旅となった。
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